食品衛生の基本「手洗い」について ノロウイルス感染も防げる洗い方
手洗いの重要性
食中毒の原因は細菌とウイルスがほとんどで、ウイルスによる食中毒のほとんどはノロウイルスです。そして細菌やウイルスの予防に有効なのが、手洗いです。
様々なものを触る人間の手は、菌やウイルスが付着しやすいです。知らず知らずの間に、菌やウイルスを付着させ、広げてしまいます。
ノロウイルスが発生した調理従事者の環境を調べると、手洗い場の不備が多かった事実があります。
石けんを使って十分に手を洗った、という場合でも食中毒が発生した例もあるようです。このことからも、正しい手洗いについて知っておく必要があると言えるでしょう。
手洗いの環境
手洗いに必要なものを準備します。
- ハンドソープ(手指の殺菌用)
- ペーパータオルもしくは「エアタオル」
- アルコール液
固形石けんは使用中に細菌汚染する頻度が高いとされています。ポンプタイプの液体石けんを使用してください。なお、一切手を触れることがないセンサー式が理想です。
食品工場では手拭き用タオルの使用は厳禁です。これはタオルを手拭きに使用すると、タオル自体が雑菌やウイルスが増殖する温床となる可能性が高いこと、またタオルから発生する「繊維クズ」が異物混入の原因となる可能性が高いからです。手洗い後、すぐに手を乾かすことができるように、手洗い場にはペーパータオルもしくはエアタオルを設置します。
手を乾かした後、アルコール液による消毒を行います。手洗いでは除去しきれない細菌やウイルスの殺菌に有効です。
ただし、アルコール液だけでは不十分であり、適切な手洗いが前提となることは肝に銘じてください。
手洗いの前に
爪が長い場合は爪を切ってください。
手を念入りに洗っても、爪の下の雑菌は除去できないとの研究結果があります。実際に2ミリ以上の爪では、正しく手洗いをしても指先から菌が発見されることが実験からわかっています。爪の下には黄色ブドウ球菌や大腸菌など、食中毒の原因になる雑菌が溜まりやすのです。
食品工場以外にも飲食店や医療現場では、2ミリ以内に保つことが推奨されています。爪の長さの基準は、手のひら側から見て爪の頭が見えないくらいです。
ただし、深爪をするのもNG。爪切りで指先を傷つけた場合、黄色ブドウ球菌が発生し、こちらも食中毒の原因となります。
無理のない程度に短く切りそろえてください。
手洗いの方法
手洗いについては「日常手洗い」「衛生的手洗い」「手術時手洗い」と要求される洗浄度によって3種類の手洗いがあります。
食品を扱う際に必要な手洗いが、衛生的手洗いです。
正しい手洗いの順番は下記になります。
ありがちなミスとして、手のひらだけを洗ってしまうことがあります。
親指、指先、指の根元、手の甲、手首まできっちりと洗うことを意識しましょう。また泡が足りないと手を十分に洗うことができませんので、石けんを手に取った後は十分に泡立てるようにしてください。
流水で完全に石けんを流し切ること、水滴を完全に拭き取ることも忘れずに。
下記が洗い残しの多い部分の図です。
利き手ではない方で洗うため、利き手に洗い残しがあることが多いようです。意識して手洗いを行いましょう。日常的手洗いは15秒程度に対し、衛生的手洗いは30〜40秒程度かかると言われています。手洗い場には「非接触式タイマー」を設置し、必ず手洗いは決められた時間行うことを徹底します。
食品工場の場合は、洗い残しが青く光る手洗いチェッカーを導入するのも効果的です。
手洗いの後
衛生的手洗いを行いましたが、食品工場ではその後も重要となります。消毒と衛生手袋についても知っておきましょう。
アルコール消毒について
アルコール消毒液は、細菌、ウイルスなど幅広い微生物に有効です。通過菌に対する効果が優れており、手洗いでは落としきれずに残った微生物もアルコール消毒液により除去できます。
ノロウイルスは「ノンエンベロープウイルス」という一般的なアルコール製剤が効きにくいタイプに分類されるため、
ノロウイルスに対するアルコールの殺菌効果は、従来は殺菌効果がないと考えられていましたが、最近の研究ではアルコールにも殺菌効果があるとの報告もあります。しかし、ノロウイルスの遺伝系統によって、殺菌効果に大きな差があるとの研究もあります。したがって、ノロウイルス対策にアルコールを使用する場合、ノロウイルスに対してより効力を高めたアルコール液(高濃度酸性エタノール手指消毒剤)の使用を推奨します。
手袋の着用
食品工場では、衛生手袋という使い捨ての手袋を着用します。
どうせ手袋をつけるならそこまで手洗いしなくてもいいのでは、という意見を聞いたことがありますが、手袋を着用する際に清潔な手で扱わなければ手袋が汚染されます。
爪切りも重要です。爪が長い場合や、爪が尖っている場合は手袋が破れる場合があります。
爪切り、手洗い、消毒を適切に行ったうえで手袋を着用することを徹底してください。
また、衛生手袋を使用する理由は、手の汚染を食品に付けないことだけでなく、食品の汚染を手につけない目的もあります。
生肉を触ればカンピロバクターなどの食中毒の原因となる菌が手に付いてしまいます。その手袋のまま生野菜を盛り付けてしまったら、菌を付与させてしまいます。
生の食肉類、魚介類、卵、生のまま提供する食材などを触る際には手袋を着用し、作業が完了後に交換するようにします。
再度手洗いをするタイミング
手洗いは衛生管理の大前提です。仕事を開始する前の手洗いは当然ですが、食事や休憩の後、トイレに行った後、ゴミを扱った時など、手が汚れた場合は必ず手洗いを行ってください。
食品工場では、一度場外に出てしまったら場内に入る時点で手洗いを再度行ってください。場外(汚染作業区域)から場内(衛生作業区域)へ入るときには、理由の如何に関わらず、必ず手洗いとアルコール消毒を徹底します。
また、手袋は場外に出る時点で、廃棄するようにします。手洗い後、再度着用してください。手袋の使い回しは厳禁です。
まとめ
衛生的手洗いの重要性とその方法を説明しました。
衛生管理は、手洗い以外にも重要なポイントがいくつもあります。ノロウイルスを始めとする食中毒を防ぐには、環境衛生レベルを高い位置で保つ仕組みづくりが重要です。
食品工場の衛生管理・環境マネジメントについてはSOCSマネジメントシステムズにご相談ください。